私たち氷帝テニス部で、近々合宿をしようという話になった。そんなとき、赤也からも合宿をするという話を聞き・・・。さらには、柳先輩の情報で青学までも合宿をすることがわかった。
それじゃ、いっそのこと、この3校で合同合宿をした方が張り合いもあって、より気合いが入るんじゃないか。
そんな提案が各校の誰かしらから出されたらしく、その方向で話が進んでいた。
ライバル校とは言え、立海にはお世話になった先輩方、幼馴染の赤也が居る。青学だって、立海や氷帝ほど多くの時間を過ごしたわけではないけれど、皆さんには良くしていただいている。だから、私は楽しみだった。それに。


「ようやく、チビ助に借りを返せるわけだな・・・。」


などと、日吉も嬉しそうにしているし。日吉が喜んでいるなら、私も嬉しい。
・・・なんて、ちょっと照れくさいことを考えてしまって、慌てて私は頭を振った。それに気付いたらしい日吉が不審にこちらを窺っている。
何か、話を考えないと!


「そういえば。越前くんのこと、『チビ助』って言うよね?今じゃ、結構高いと思うけど?」

「前に試合したときは、小さかったから。」

「どれぐらいの身長だったんだろう?日吉は・・・その頃、どれぐらい?」


うまく誤魔化せたとは思えないけど、少し考え込んでいる日吉を見ると、どうやらこの話に乗ってくれたみたいだ。・・・よかった。


「そうだな・・・。あの頃は・・・身体測定で・・・172ぐらいだったな。」

「172か・・・。それで、越前くんはどれぐらいだった?」

「たしか・・・この辺りだったと思うが。」

「じゃあ、20cmぐらい違ったってことかな。・・・ってことは・・・約150cm。たしかに、まだ小さいね。でも、中学生の男の子じゃまだまだ伸びるもんね!今はどれぐらいなんだろう・・・?」

「・・・・・・・・・。」


・・・あれ。突然、日吉が黙り込んだ。・・・やっぱり、うまく誤魔化せてなかったみたいだ。
だけど、ここで引き下がるわけにもいかない。だから、私は無理にでも話を続けた。


「前会ったときは・・・これぐらいじゃなかったっけ?」

「さぁな。」

「う〜ん・・・これぐらいだったと思うんだけどなぁー・・・。仮に、これぐらいだったとしたら・・・何cmになるんだろう?」

「・・・そんなことを知ってどうする。」

「いや、別にどうするってこともないけど・・・。」


マズイ。妙に日吉の言葉の端々に刺々しさを感じる・・・。


「ほら!マネージャーとして、少しでもデータ収集しときたくなるんだよ。」

「何だ、その取って付けた様な理由は。」

「いやいや、本心だって。」


そう言い返しつつも、日吉は完全に疑いの目でこちらを見ている。
・・・正直、その迫力に気圧される。それほど、きつい視線だった。・・・・・・そんなに怪しまなくたっていいじゃない。
と思ったけど、どうやらそれだけではなかったらしく、口調まできつい調子で日吉は言った。


「大体、あんな奴の情報を知って何になる?アイツのテニスは身長でやるもんじゃない。そんなことを知ったところで何の役にも立たないということぐらい、ならわかるだろう?」

「た、たしかに・・・。」


あまりの私の低能さに呆れられてしまったらしい。・・・とも思ったけど、それも違うようだった。


「そんなにチビ助のことが気になるのか?」

「え・・・?」

「・・・・・・・・・。」


何となく・・・と言うか、まるで・・・と言うか。日吉はヤキモチを妬いているかのような言い方だった。
日吉は依然として不機嫌そうな表情で・・・そんな確認はできなかった。・・・いや、普通でも確認できるわけないけど。
だから、とりあえずは話を逸らそうと考えた。一応、確認もできそうな感じで。


「まぁ、わからなければそれでいいんだけどね。・・・そんなことよりさ。日吉はどうなの?今は何cmぐらい?」

「チビ助のことは、もういいのか。」

「うん。それよりも、日吉だよ。日吉の方が知りたい。」

「・・・それもマネージャーとしての情報収集、か?」

「それもあるね。」

「も?」

「そう。それと、ただの私の知的好奇心。」


越前くんのときとは違う。そこを強調すれば、何かがわかるかなと思って、私は満面の笑みでそう答えた。
すると、日吉の反応は・・・。


「何が知的好奇心、だ。そんなものは知的でも何でもない。」

「えぇー、充分知的だって!よく問題にも出るでしょ?・・・Aくんの身長は150cm、Bくんの身長は165cm、Cくんの身長は157cmでした。さて、3人の平均身長は何cmでしょう!みたいな。」

「そんなの小学生の算数にしか出てこないぞ。」

「算数だって知的分野だよ。」

「もう高校生だろ?だったら、せめて数学にしとけ。」

「だって、数学に身長って出てくる?」

「だったら、知的好奇心とは言えないだろ?」

「そうかなー?・・・まぁ、いいよ。で、何cmなの?」

「・・・そんなに算数の問題にしたいのなら、その答えも自分で考えてみるんだな。」

「何よー!日吉のケチー!!」


私がすねている横で機嫌良さそうに、日吉は笑みを浮かべている。いつも通り、私をからかって面白がるような態度に戻ったらしい。
・・・ねぇ、日吉。本当に、もしかして、さっきの不機嫌は嫉妬の所為だったりする?













というわけで、話が少し進展してまいりました!!今後は、この嫉妬みたいな態度がキー(?)になっていく感じです。
残りもあとわずか。できれば、最後までお付き合いいただければ、大変嬉しく思います!むしろ、ここまで目を通してくださり、誠にありがとうございます!!

それにしても、高校生設定にしてしまったばかりに、また悩んでしまいました・・・!(苦笑)中学生から高校生になったら、身長は伸びているでしょうし・・・。さすがに、勝手に身長は考えられないので、具体的数値を出さない策で乗り切らせていただきました(笑)。

('09/12/02)